texturehometext archivephoto worksaboutspecialarchive 2ueno osamu

['94「わたしの写真展ベスト5」/アサヒカメラ1995年3月号増刊・カメラブック'95:298-299]


 今、写真表現に必要とされているのは、しかるべき解答を表現に与えることではなく、写真表現を捉え返し、表現の活力となりうる問いへとそれを作り変えていくことだろう。客観的と呼ばれる一つの形式が、試行錯誤の中で育まれた歴史的なものであることを浮び上らせていた『肖像の彼方』。写真を見ることにおける差異化の位相を照し出していた『CONTACT PRINTS』。フォトグラムという技法の実験的な場面を展開していた『カメラを使わない写真』。生きることのアレゴリーとしての写真へと表現を変容させることを試みた『〈自伝〉修羅の圏』。写真行為そのものが写真表現であることの極点を見せた『雨に溺れて』。こうした意味で、ここに挙げた写真展は「ベスト」というよりも、今日的かつ刺激的な問いを生み出す契機を孕んでいたように思われた写真展である。

●『肖像の彼方』
アウグスト・ザンダー
ワタリウム美術館
5月14日〜8月21日

●『CONTACT PRINTS/観ること・観つづけること』
伊藤義彦
フォト・ギャラリー・インターナショナル
9月1日〜30日

●『カメラを使わない写真』
スーザン・ダージェス、ゲリー・ファビアン・ミラー
横浜美術館
10月2日〜23日

●『〈自伝〉修羅の圏/finish dying』
鈴木清
銀座ニコンサロン
11月22日〜28日

●『雨に溺れて』
田村彰英
mole
12月12日〜24日