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[吉村朗写真展:会場内掲示文]


写真家は、身体によって現実世界に内属し、写真によって現実世界を見渡す。ここに展開されているスナップ・ショットの不自然な在りようは、そのような分節の構図がすでに転倒したものであることを照し出しているようだ。ここで対象化されているのは現実世界というよりも、そのような構図そのものであり、それによって示されているのは、純化された視線のアナロジーとしての写真によって、写真以前に措定される現実世界に到達することの不可能性に他ならない。写真なるものこそが現実的なここでは、その現実化によって現実世界ではなく写真が、また、写真に埋め込まれた身体が分節されている。換言すれば、写されるものとしての想像的なものと、写されたものとしての現実的なものが絶えず二重化する構図が、描かれている。この写されるもの/写されたものの二重性において見ることを、吉村の写真は要求しているように思われる。