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[ON THE BOOKS12:フリードランダーとアダムス・印象深いアンソロジー2冊/アサヒカメラ1989年12月号:125]


To Make It Home: Photographs of the American West  今年はとても印象深いアンソロジーが2冊出版された。リー・フリードランダー(Lee Friedlander)の『LIKE A ONE-EYED CAT』(片目の猫のように)とロバート・アダムス(Robert Adams)の『TO MAKE IT HOME』(それを故郷とするために)。どちらも初期の頃からごく最近の写真までを編んだ、たいへん整った本である。

 2人は世代の離れた写真家ではあるが、私が写真に意識的にかかわりだしたころ、いつも新しい写真集が出るのを楽しみにしていた作家という点では共通している。80年代の写真の流行はめまぐるしく、今では(と言ってもそれからたった数年経っただけなのだが)、2人ともむしろ写真の系譜学的な作家という印象をもってしまっていた。

 だが、この2冊から2人の仕事をあらためて見かえしてみると、いつも「〜を超えて」といった形で紹介されてきた、ポストモダン写真などと総称されている80年代の写真が決して「新しい」とばかりは言えないように思えてくる。例えば、写真を撮るものではなく作るものだとしてとらえる意識は、すでにフリードランダーによって先取りされているのだし、対象とのかかわりあい方を従来の文脈からずらしていく意識をアダムスの写真に見ることもできるからだ。

 むろん、派手な写真より、これらのオーソドックスに見える写真の方が優れているなどと言うつもりは全くない。そうではなく、「社会的風景」や「環境問題」といった言葉で、これらの写真を歴史的文脈に収めてしまう前に、彼らの仕事からまだまだ読むべきことがありはしないかと思うのである。