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[ON THE BOOKS10:ベストセラーの『アーバス伝』/アサヒカメラ1989年10月号:119]


 写真に関する本というと、写真集ばかりを思いうかべてしまいがちだが、海外では写真に関する文章の本もけっこう盛んに出版されている。外国語というとつい敬遠してしまいがちだが、興味のある写真のことなら案外気軽に読み始められるものだ。何も学校のテストじゃないのだから、面白いところだけをとばし読みしたっていい。今回は、秋の夜長に気ながに読んでみるのにおすすめの英語の本を紹介したい。

Diane Arbus  『Diane Arbus: A Biography』はダイアン・アーバスの伝記。アーバスの10代から1971年の自殺までを、パトリシア・ボズワースが200人近くへのインタビューと多くの資料をもとに書きつづったもの。内容については賛否両論があるようだが、なにせベストセラーになった位だから読み物としてはかなり面白い。アーバスとつながりがあった写真家の話も書かれていて、この時代のアメリカの写真の状況も垣間見ることができる。

Beauty in Photography: Essays in Defense of Traditional Values  『BEAUTY IN PHOTOGRAPHY』は写真家ロバート・アダムス(Robert Adams)による写真論を集めたもの。英文学を学んだアダムスの文章は、たんなる写真家の肉声にはとどまらず、思慮深い写真の考察として充分読みごたえがある。

Photography in Print: Writings from 1816 to the Present  特定の写真家とか写真論に興味があるわけではないという人には、『Photography in Print: Writings from 1816 to the Present』『Reading into Photography: Selected Essays, 1959-1980』などがおすすめ。前者は80近い文章のアンソロジーで写真の歴史をふりかえる、いわば文章における写真史。後者は59〜80年に書かれた写真論から20の文章をよりすぐったもので、アメリカの現代写真の流れをみるのには格好の本だ。いずれも一つ一つの文章はそんなに長くはないので、ぱらぱらとページをめくって気に入ったところを読んでいくのには最適である。