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[ON THE BOOKS5:カタログで確かめよう/世界の写真の現状/アサヒカメラ1989年5月号:111]


 欧米の写真の情報を見ていると、アメリカならニューヨーク・ロスアンジェルス・サンフランシスコ、ヨーロッパならフランス・ドイツ・イギリスからといったものが多く、ついつい他の地域の地道な活動を見のがしてしまいがちだが、洋書店で輸入されてくるカタログ類を見ていると、いろいろな企画がさまざまな場所で行われていることがわかる。

 『QUESTIONING EUROPE』は昨年オランダのロッテルダムで催された写真ビエンナーレのカタログ。ベルギー・チェコスロバキア・オーストリア・フランス・西ドイツ・イギリス・スペイン・ノルウェイ・オランダ・フィンランドの若手写真家(20代から40代前半)の写真が収められている。普段はあまり目にふれない国々の、しかも若い世代の写真が断片的にせよ見られるのがうれしい。その国の写真の傾向といったことを性急に判断したりするよりも、当り前のことなのだが、写真にシリアスに関わっている若い写真家がヨーロッパの各地に多く存在することに、まず共感を覚えてしまうようなカタログだ。

 『THREE ON TECHNOLOGY』はMIT(マサチューセッツ工科大)のプロジェクトによりロバート・カミング(Robert Cumming)、リー・フリードランダー(Lee Friedlander)、ジャン・グルーヴァー(Jan Groover)の三人が、現代のテクノロジーを巡って撮り下ろした写真をまとめた一冊。このちょっと変わった組み合わせは、目に見えにくくなっているテクノロジーにアプローチするのに、しっかりとした写真の方法論をそれぞれ持っている写真家を選んだことによる。

 『PHOTOGRAPHY ON THE EDGE』はウィスコンシン州の美術館が、いわゆる写真と他のメディアとの境界での作品を集めた企画のカタログ。企画自体はとりたてて目新しくはないが、地方の美術館が積極的にこうした企画に取り組んでいるところにアメリカの写真の底力を感じる。こうした、公共や企業のプロジェクトによる写真の企画や、美術館による写真の企画展の多さは、アメリカの現代写真の特色でもある。