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[ON THE BOOKS2:『PHYLO PHOTOGRAPHS ANNUAL 1989』完成/アサヒカメラ1989年2月号:107]


 80年代始めにコンセプチュアルな写真を中心に展開していた自主ギャラリーOWLのンバーが中心となって、写真と文章による一冊の本『PHYLO PHOTOGRAPHS ANNUAL 1989』が出版される。彼らはOWL閉鎖後もグループ展などを続けきたが、アニュアル(年鑑)を編むことで新しい写真作業の場所を作っていこうというとらしい。

 当時難解に見えるあまり「閉鎖的」などと呼ばれることもあった彼らの活動だが、本のメンバーには87年の栃木県立美術館での「現代美術になった写真」に出品した伊藤義彦や五井毅彦なども含まれ、独自性をもった彼らの動きは確実にポピュラリティーを得きているようだ。その意味でも彼らの動きには注目していきたい。編集に加わっている島伸三氏も「『写真』『表現』『記録』などといったキー・ワードが明確な分析をされないま、いいかげんな事が、暴力が、『写真』『表現』『記録』を食い物にしてしまっている。彼らは先ずこの点をクリアーにしようということのようだ。こんな哲学的遊びにとりつかた写真家たちとの交流は、私のような夢うつつの人間には得がたい楽しみである。」と述ている。

 「写真は長い間、生まれて間もない頃から、絵画と文字に翻弄されて来たことになる。真は複製品、贋物、機械の作った冷たい物、そして魔法を使って暗室で作られる自然の法(神)に背く物だった。」と言う彼らの目論むものは「分析を超える写真」であるらしい。分析することで閉塞していくのではなく、開かれた写真の世界へと向かう意思。久々に、野心的と呼ぶに足る写真の本が出現したようだ。私も一文を寄せているので手前味噌のよう恐縮なのだが、日本の若い世代の写真に興味がある人だけでなく、写真を面白いと思ってる人すべてに見てほしい一冊である。

限定500部・定価2500円・1月1日発行