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[ブックレビュー/nikkor club #200 2007 spring:104-105]


JUST WAIT 坂田栄一郎写真集 『Just Wait』は、『PIERCING THE SKY 天を射る』などの作品や、週刊誌「AERA」の表紙ポートレイトなどの仕事でよく知られている坂田栄一郎氏の初期作品が、はじめて写真集化されたものです。

収められた写真が撮影された1966年から70年というのは、坂田氏がリチャード・アヴェドンの助手をしていた時代であり、坂田氏はニューヨークのタイムズスクエアーに毎日のように足を運び、声をかけてポートレイトを撮らせてもらったそうです。タイトルになっている『Just Wait』というのは、声をかけるときのひとこと。モノクロームで正面から撮影された直球勝負のポートレイトには、人々のありようが克明に写しとられているのはもちろん、時代の空気や場所の匂いまでもが封じ込められているかのようです。

坂田氏の原点とも言うべきこの写真集は、今日見ても、いささかも古びることのない力を持っています。それだけでなく、助手というハードワークをこなしながら、これらの写真が撮られたことを考えると、ひたむきな情熱を感じずにはいられません。この意味で、写真家を志す人たちや、アマチュアカメラマンの励みにもなる一冊だと思います。

EXISTENCE and TIME 存在と時間 『EXISTENCE and TIME/存在と時間』は、昨年、新宿と大阪のニコンサロンで同タイトルの展覧会が開催された、春日広隆氏の写真集です。春日氏は、次のように述べています。

〈タイトルの「存在と時間」は、「存在とは」「時間とは」という命の根本的問題を論じたハイデガーの哲学書から引用しました。ハイデガーは人間が自分の存在を意識すると言う点で他の存在とは異なると言っていますが、私には砂漠の草や砂や風もそれぞれの存在を意識しているように思えます〉

大判カメラで細部まで捉えられた静謐な風景は、まるで存在や時間を凝固させたかのような、独特の生命観を感じさせる世界を形作っています。撮影はフィルムで、プリントはデジタルで行われているそうですが、最適な技術を用いたモノクローム写真ならではの魅力に溢れた作品でもあります。

光の音色 優しい時間のなかで 米美知子写真集 『光の音色―優しい時間(とき)のなかで』は、新進女性ネイチャー写真家として注目されている米美知子氏の、2冊目となる写真集です。

初の写真集は、八甲田・奥入瀬・十和田をモチーフにしたものでしたが、今回の写真集の舞台は、北海道から沖縄まで、日本全国となっています。撮影エリアは広大ですが、典型的なシーンにしばられることなく、しなやかなまなざしで、各地の自然を切り取っているのがとても印象的です。

見ていて心安らぐ写真集でもありますが、収録されたそれぞれの写真の詳細なデータが巻末に掲載されているので、ネイチャー派の方には、写欲がそそられる撮影の手引きにもなる一冊でしょう。

俺達のストリップ物語 1976‐2006 『俺達のストリップ物語 1976-2006』は、ストリップ興行師であり、現役の写真専攻の大学院生でもある川上譲治氏が、70年代から断続的に撮り続けてきたストリップの舞台と楽屋を編んだものです。なかなか写真に収められることのないストリップの世界が興味深く、それゆえ、貴重な記録になると思われる写真集です。モノクロで荒れた粒子の写真が、時代性も物語っているのが印象的です。

水辺の宝石 カワセミ木島宏写真集 (NC PHOTO BOOKS) 『水辺の宝石 カワセミ』は、カワセミを撮り続けている木島宏氏が、10年間の写真をまとめた写真集です。

〈子供の頃の遊び場は、清流の波立つ荒川の河原だった。その時見たカワセミの美しさは、特に印象的だった。退職して半世紀ぶりにカワセミと出会い、思わずシャッターを切った。子供の頃の体験がなければ、カワセミに思いを寄せることはなかったと思う〉

このように言う木島氏による写真は、少年のように初々しいまなざしが感じられ、躍動感に満ちており、とても新鮮です。

ヨーロッパ 犬の王国 『ヨーロッパ 犬の王国』は、犬猫写真家として知られる新美敬子氏が、フランス、イギリス、スペイン、イタリア、ドイツなど、ヨーロッパ18カ国で撮影した犬の写真を編んだ一冊です。

カタログ的ではなく、それぞれの犬のキャラクターがみごとに捉えられており、そこから犬と人の関係、土地の文化の在りようまでもが感じられるのが魅力的です。

キカン猫(コ)カテキン 『キカン猫(コ)カテキン』は、その新美氏が飼っている、すて猫だったカテキンが主人公の写文集です。

もっとも身近なモチーフというのは、逆に写真を撮るのがひじょうに難しいものです。しかし、この本からは、カテキンの個性と、カテキンへの愛情が、よく浮かび上がっており、新美氏の実力を感じさせられる一冊でもあります。

ニコンD80マニュアル 作画派のためのデジタル一眼レフカメラ (日本カメラMOOK) 『ニコンD80マニュアル』は、人気のデジタル一眼レフカメラ中堅モデルであるD80の詳細な使い方と、具体的な撮影テクニック、基本的なデジタル画像の扱い方を、わかりやすく解説したムックです。大判の見やすいサイズなのが嬉しい一冊です。

mamaユs cameraこどもと一緒に、カメラをもって。 (日本カメラMOOK) 『mama's camera〜こどもと一緒に、カメラをもって。』は、こどもの撮り方を提案したママ向けのムックです。しかし、作例も豊富で、さまざまな提案がなされているので、誰にとっても役に立つ、写真の入門書として楽しむことができると思います。