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[書評:頁をめくれば空撮の世界の遺跡が立ち上がってくる・アンリ・スティルラン『世界の古代遺跡』/日本カメラ2007年11月号:177]


世界の古代遺跡 (空から見る驚異の歴史シリーズ) 世界の大聖堂・寺院・モスク (空から見る驚異の歴史シリーズ)

『世界の古代遺跡』は、空撮による古代の遺跡や建造物の写真集である。人間の視点ではない、空からの景色というのは、単純にそれだけで魅力的なものだ。写っているものが、古代遺跡となれば、その魅力は何倍にもふくらむ。

空からの景色という単純な魅力を楽しむには、写真もまた単純に大きければ大きいほどよいといえるだろう。しかし大きな写真集というのは、扱いづらい。この矛盾を、本書はユニークな造本で解決している。

本書のサイズは、横開きのA4判変形という、ふつうのものだ。見開きのページには、写真と文章で、遺跡や建造物が紹介してある。これもまた一般的だろう。だが、ここから先が画期的だ。見開きページを、さらに縦方向に開くことができるのである。つまり、この本のサイズの4倍、B3サイズを超える530ミリ×390ミリの、ポスターのようなサイズの写真が出現することになる。

この仕掛けは、写真集を見るという体験にも動きを与える。すべてを開くまで、どんな写真があらわれるのか想像がつかないので、ポスターサイズの写真を見るときには、思わず声をあげてしまいそうな感動がある。写真が撮られている高さやアングルも絶妙だ。エジプトのギザのピラミッドといった、映像で見慣れているはずの遺跡も、新鮮に感じる空撮が掲載されている。

収録されているのは、ストーンヘンジ、モヘンジョ・ダロ、アテネのアクロポリス、ポンペイ、ローマのコロセウム、交河故城、アンコール・ワット、チチェン・イツァ、マチュ・ピチュなど、全29ヵ所。古代遺跡に興味がある人はもちろん、あまり興味がなかった人も、本書ならきっと、わくわくしながら見ることになるだろう。

本書は、全五巻からなる「空から見る驚異の歴史シリーズ」の一冊として刊行されたもので、既刊としては『世界の大聖堂・寺院・モスク』がある。これから、城、宮殿、20世紀の建築をテーマにした巻が出版される予定で、続巻も楽しみだ。

世界の城と要塞 (空から見る驚異の歴史シリーズ) 世界の大宮殿 (空から見る驚異の歴史シリーズ) 世界の20世紀建築 (空から見る驚異の歴史シリーズ)