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[お気に入りカメラバッグを探せ!/日本カメラ2005年7月号:162-174]


162-163

ショルダー系

レンズやフィルムの交換などで、撮影中は何かと機材の出し入れをすることが多い。肩かけタイプがカメラバッグのなかで最もポピュラーなのは、機材の運搬と、出し入れのしやすさが両立しうるからだろう。しっかりと閉まり、かつ簡単に開けられることが要求されるバッグやポケットの開閉方法は、各メーカーがしのぎを削る部分。最近では、この激戦区の肩かけタイプに、メッセンジャーバッグから生まれた、たすきがけ専用タイプも登場して、さらにバリエーションが広がっている。

ザック系

機材が多く、しかもそれを自分で運搬しなければならないアウトドア系のカメラマンに人気なのが、ザックタイプ。肩と腰にバランスよく負担がかかるので、一日撮影をしたあとの疲れも、肩かけタイプよりはずっと軽減される。両手が完全にフリーになるので、移動中の安心感があるのもいい。機材の出し入れは、バッグを一度降ろして開けるという2アクションになるが、その分各メーカーも、シンプルな1気室構造・荷物と重量を振り分けられる2気室構造・1気室と2気室を切り替えられる構造のものなど、内部の収納方法に趣向を凝らしている。

ハード系

精密機械であるカメラの運搬ということを考えると、ソフトタイプにはどうしても限界がある。優れたソフトタイプが登場している現在でも、多くのプロカメラマンが重いハードタイプを使用しているのは、絶対に失敗してはならない撮影のための保険のようなもの。衝撃や荷重から大切な機材を守ることを最優先するなら、必然的にこのタイプになる。ロック付きのものなら、ハンドルにチェーンロックをつなげば、撮影先での簡易保管庫になるというメリットもある。

購入ポイント

定評があるカメラバッグというものはあるが、万人にとって最高のカメラバッグというものは存在しない。身体も機材も、人によってそれぞれだからだ。高価なものが、必ずしも自分にとって快適だとは限らないのが、バッグ選びの難しいところ。ぜひオススメしたいのは、お店でひとこと断って、じっさいに常用する機材を入れてみたり、それを持ってみたりすること。また、仲間がどんなバッグを使っているのか、日頃から情報交換しておくのもいい。人気カメラバッグの多くは、口コミで広がった歴史を持つ。プロもまた、日頃から仲間のバッグを観察しているのだ。


168-172

mt.dax(マウンテンダックス)

1976年にクライマーである半谷貞夫氏によって設立されたブランド。daxは、daring(冒険的気性)、attempt(試み)、x(未知)を意味している。実践的な経験をもとに、日本人の体形に合わせて作り出されるザックは、多くの岳人や遠征隊に高く評価されている。カメラザックのシリーズは、プロカメラマンとの共同開発により生まれた。

マウンテンダックス CS-Pro 2000 専用ザックカバー付き マウンテンダックス CS-Pro 3000 専用ザックカバー付き
・CS-pro2000(サイズ違いで3000)
機材の出し入れの時に背負う面が汚れないようになっている、背面側から開けるバックサイドエントリーシステムが画期的。内部のパッド類にそれぞれ強度をもたせたモノコック構造は、人が乗っても崩れないほどの強度を誇る。

マウンテンダックス CS-2100 専用ザックカバー付き マウンテンダックス CS-2200 専用ザックカバー付き
・CS-2100(サイズ違いで2200)
CS-PROのモノコック構造を継承した、ハイキング向けシリーズ。サイドポケットは着脱式で、ポケットの位置に三脚を装着することもできる。付属のレインカバーは、ザックにかぶせて内部への雨や埃の侵入を防ぐだけでなく、カメラ用のカバーや器材置き用のシートとしても使えるスグレモノ。

DELSEY

ヨーロッパを中心に大きなシェアをもつ、スーツケースのトップブランド。「Born to Move」のコンセプトに基づき、快適な移動を実現するという一貫したテーマで素材とデザインを追求している。カメラバッグには、独自開発のポリエステルとナイロンを組み合わせた、しなやかな素材が使われている。洗練されたヨーロピアンデザインが魅力。

・T-300
新しいラインの「XEO(エグゼオ)」は、ブラックグレーとブラックブルーの2種類の配色が選べるスポーティなデザインが特長。T-300は、大量の機材を運搬できるキャスター付モデルで、樹脂製のホイールは、転がす音をほとんど出さない。XEOラインには、さまざまな種類があるので、バッグを「XEO」ラインで統一することもできる。

・computer Case PHEX16
デジタル一眼レフシステムとノートPCをセットで収納できるモデル。カメラ機材のスペースはウレタン内蔵のインナーボックスタイプ。そっくり取り出すことも出来るだけでなく、蓋とショルダーストラップの金具が付いているので、単独でも使用可能。型番のPHEXはPhoto Expandableの略で、その名のとおり裏スペースは拡張可能になっている。



DOMKE(ドンケ)

報道カメラマンであったジム・ドンケが、軽量かつコンパクトで身体になじむバッグを作るために、ガレージのミシンで帆布を自ら縫って作ったという伝説のブランド。口コミで評判が広がり、アメリカ中の報道カメラマン達から注文が舞い込むようになって、1976年に創業された。現在では、世界中の報道機関の“標準カメラバッグ”になっている。

ドンケ F-2 ブラック ドンケ F-2 オリーブ ドンケ F-2 サンド
・F-2
オリジナル・ドンケという異名を持つF-2は、ジム・ドンケが作った最初のモデルそのもので、サイズやデザインはほとんど変化していないと言う。F-2を持つことは、伝説を持つことでもある。たった1.2kgのバッグのなかに、一眼レフ2台と4〜7本のレンズが入る。

ドンケ DOMKE ドンケF-803 オリーブ F-803 オリ-ブ
・F-803
カメラバッグのように見えないサッチェルバッグタイプのF-803は、ビジネスやタウンユースにも最適。カメラとレンズ数本を収納できて、ポケットも豊富なので、街歩きにもオススメだ。バッグ側面のフックでF-2に取り付けることもできる。

TENBA(テンバ)

従来のバッグに満足できなかった、山岳系のカメラマン、ロバート・ワインレブが、軍用のコーデュラナイロンでウレタンクッションを包み込むことを思い立ち、1977年に創業したブランド。ドンケと双璧をなす軽量カメラバッグのパイオニア。「TENBA」は、ワインレブがチベット取材の時に覚えたチベットの言葉で、「最高のもの」を意味する。

・P-995プロパック
プロパックシリーズ最古の定番モデル。35mmの箱入りフィルムが40本入る上蓋ポケットが便利。一眼レフ2台と5本前後のレンズが入る内部は、300mmF4クラスのレンズを立てたままで収納可能で、この万能なサイズがプロカメラマンたちに愛されている。

・TENBA-2プロパック
何の変哲もないボックスタイプのコンパクトなモデル。そのシンプルさゆえに、ライカ使いをはじめとしたスナップショット派のカメラマンの定番になっている。バッグの開閉がフラップではなく、ジッパーになっているので、思い立った時にスピーディーにカメラを出し入れできる。



ZERO HALLIBURTON(ゼロ・ハリバートン)

1930年代に、世界を相手にビジネスをしていたエンジニアのアール・P・ハリバートン・シニアが、航空機設計会社の協力を得てアルミニウム合金製のケースを作り、圧倒的な密封性・耐久性・強度を誇るゼロ・ハリバートンが誕生した。1969年に、標準モデルの内側だけ改造したものが、アポロ11号用の月面採取標本格納器に採用され、世界に名をとどろかせた。

・106C
極限まで無駄を削ぎ落としたデザインであるにもかかわらず、ゼロ・ハリバートンを持つと自分だけのケースを手にしているような気持ちになる。自分の機材がピッタリと入ったゼロなら、なおさらだろう。内部のウレタンクッションをカットする収納方法なので、撮影スタイルを確立している人向け。

Crumpler(クランプラー)

オーストラリアの3人の自転車便メッセンジャー、ステュアート・クランプラー、ウィル・ミラー、デイヴィッド・ローパーによって、1995年に設立されたブランド。カジュアルでカラフルなデザインは、個性的なだけでなく、身体によくフィットするように考えられたもの。遊び心満点のホームページは必見(http://www.crumpler.com.au/)。

・フィフティーンラブ(赤)
クランプラーならではの、たすきがけで使うメッセンジャーバッグタイプ。ショルダーバッグをたすきがけで使うのとは全く違った、抜群のフィット感がある。自転車やバイクに乗る時はもちろん、街歩きにもオススメのモデル。一眼レフとレンズ2本程度が収納できる。

・ファーマーズダブル(オリーブ)
前後で2気室になっているユニークなデザインが特長のザックタイプ。一眼レフとレンズ3~4本、17インチまでのノートPCが収納できる。カメラの仕切りは使用しない時は外すことができるので、PC対応リュックとしても使える。

ラムダ

登山家でありカメラマンである社長の佐久間氏が、多くのカメラマンと厳しいフィールドテストを行っている、カメラザックの専門メーカー。30年という歴史と実績に裏打ちされた、山と写真を知り尽くした設計により、山岳写真・ネイチャーフォトの揺るぎない定番ザックの地位を獲得している。

・スナッピーザック
ネイチャーだけでなく、タウンユースにもぴったりのシンプルなタイプ。三脚を縦に取り付けることができる。表は銀レフ、裏はシェードに使用できる取り外し式の背面パッドは、専門メーカーであるラムダならではのアイデア。

・シューティングザック
日帰りから1〜2泊の山行、ネイチャーフォトの撮影に最適の、容量25リットルタイプ。三脚をザック中心部に取り付ける、バランスを考慮した設計。開閉はフルオープンファスナーで、使いやすい。レフ板が付属している。

Kenko(ケンコー)

フィルターでおなじみのケンコーは、ソフトタイプのザックからアルミケースまで、さまざまなカメラバッグを販売している。樹脂製キャリングケースで知られる「PROTEX(プロテックス)」、アメリカで人気の「tamrac(タムラック)」、ファッション系の「BENETTON(ベネトン)」も取り扱う。

・ベネトントートバッグ313
カメラバッグとしては珍しいトートタイプ。無骨な印象のカメラバッグを持ちたくない女性でも、このデザインなら抵抗なく使えそう。老若男女を問わないブラックを基調にしたカラーは、ファミリーユースにぴったり。カメラ以外にも使えるマルチなバッグでもある。

HAKUBA(ハクバ)

三脚、ケース、アルバム、フレームなど、幅広く写真関係の用品を扱うハクバ。カメラバッグも、プロ向けの「GW-PRO」、アウトドア向けの「Godwin ADVANCE」、カジュアルな「ルフト」など、多彩なラインを展開している。アルミケースも充実。アメリカで有名な「Lowepro(ロープロ)」、防水ハードケースで知られる「pelican(ペリカン)」も取り扱う。

・カメラホルスター
カメラバッグにしまうほどではなく、撮影中にちょっとだけ両手をフリーにしたい時は案外多いもの。そんな時に便利なのがこのカメラホルスター。文字通り拳銃のホルスターのように、カメラを腰元に収めることができる。「GW-PRO」ラインのなかでも、ハクバらしいユニークな一品だ。

mont・bell(モンベル)

山一筋の青春を過ごした日本のトップクライマー辰野勇が、ふたりの山仲間とともに1975年に設立したブランド。「Function is Beauty」をコンセプトにした商品開発によって生まれたアイテムは数千を数え、世界屈指のアウトドア用品総合メーカーになっている。日本で初めての身障者カヌー大会をスタートさせるなど、社会活動や遠征支援に積極的な、夢を大切にするブランドでもある。

・フォトウォーカーウエストバッグ
カメラとレンズ1〜2本が余裕で入るウエストバッグ。蓋全体を開けなくても、カメラやレンズが取り出せるクイックアクセスジッパーや、一脚や軽量な三脚を取り付けられる底の本革製のパッチといった、カメラマン向けの心配りが嬉しい。ブラック、ハンターグリーン、マルーンの3色が選べる。

thinkTANKphoto(シンクタンクフォト)

1992年から2003年まで、11年間に渡り「LowePro」でカメラバッグのデザイナーを務めたダグ・マードックが、仲間数人と創設した新しいブランド。ターゲットをデジタル一眼レフを使うスポーツカメラマンと報道カメラマンに絞り込み、ベルトパック(ウエストバッグ)とベルトにモジュールケースを付けるモデュラスベルトのみを製作するという、ユニークできめ細かな製品開発が特長。

・Speed Demon
交換用のレンズや、ストロボ、スペアバッテリなどを収納するのにちょうどいい、小型のベルトパックモデル。水気に弱いデジタル機材に特化しているだけあって、全周型のレインカバーとCFカードケースが内蔵されている。保護用のクッションは取り外しできるので、一回り大きな機材を収納することも可能。

エツミ

オーソドックスな写真用品だけでなく、かゆいところに手が届くアイデアグッズも豊富なエツミ。カメラバッグは、スポーティな「アペックス」、カメラと衣類を収納できる「トゥルーリー」、プロ向けの「トゥルーリープロ」、そしてアルミケースなどを展開している。アメリカ生まれの「f.64」、ブリティッシュトラッドのデザインが人気の「Billingham(ビリンガム)」、トラベルバッグで知られる「Samsonite(サムソナイト)」、ファッション系の「PERSON'S(パーソンズ)」も取り扱う。

・キーファ 本革ショルダー
軽量素材の質感になじめない。かといってハードタイプのバッグも持ちたくない。そんな人にオススメなのが、この本革ショルダーバッグ。どこにでもあるようなデザインだが、今の時代、こうした革製のオーソドックスなカメラバッグが、じつはなかなかないのだ。国産ブランドならではの落ち着いた一品。

f.64 カメラバッグ TSL ブラック f.64-TSL-B
・f.64 TSLトート
アンセル・アダムスなど、著名な作家が名を連ねた伝説の写真家集団「f.64グループ」の名を冠した、カメラバッグブランド「f.64」。スッキリしたデザインは、まさにアーティスト・テイスト。手さげでも肩かけでも使えるこのトートも、黒素材に黒文字で刻まれている「f.64」のロゴが、渋くてオシャレだ。



*再掲にあたり価格など変更の可能性のある詳細情報は削除しました


172-174

カメラバッグ・クロニクル

[馬車・十九世紀のカメラバッグ]
 写真が発明された初期の写真家は、どんなカメラバッグを使っていたのだろうか?
 湿板写真の発明により、露光時間が秒単位になったことで、さまざまな風景や出来事が写されるようになったが、この方式の場合、ガラス板に感光液を塗り、それが湿っている間に撮影・現像しなければならなかった。ということは、この時代の写真家が外で写真を撮るときには、カメラ・レンズ・三脚だけではなく、簡易テント暗室・薬品・ガラス板などを持ち運ばなければならなかったのである。
 撮影旅行に出る場合、こうした装備の総重量は百キロを超えたといわれている。もちろん、それだけの装備をバッグに入れて、人力で持って歩くわけにはいかない。この時代の写真家は、カメラバッグどころではなく、装備一式を持ち運ぶ馬車などが必須だったのだ。

[専用カメラケース]
 カメラを気軽に持ち運んで撮影できる時代になっても、カメラバッグというものは、それほど必要にされなかったように思う。
 レンジファインダー式のハンドカメラ、二眼レフカメラ、標準レンズ付一眼レフには、その形にぴったりと合うように作られた専用のケースが付いていることが多く、そのケースに入れて持ち運び、撮影するときにだけケースの蓋をはずしてカメラを出すというのが、長い間、一般的な使い方だったのではないだろうか。こうした専用のケースは、フィルム交換のたびにケースを外さなければならない、不便きわまりないものにもみえる。しかし昔は、正月から暮れまでが一本のフィルムに写されていることを指す、カレンダーフィルムなんていう言葉もあったくらいなので、それでも不都合は感じなかったのだろう。
 カメラ・レンズ、フィルムがまだまだ高価だった時代、トランク式のカメラバッグや、小型の皮のカメラバッグに、裸のカメラと交換レンズを入れ、どんどんフィルム交換して撮影するのは、プロの写真屋さんや、凝ったアマチュア・カメラマンの世界。それを、憧れの目で見ていた記憶がある人も多いはず。
 今でも専用カメラケースは売られているが、ズームレンズが標準になったせいか、汎用の流線型っぽいものが多く、ぴったり感に乏しい。今見てみると、昔の専用ケースは、芸術的ですらある昭和レトロ感に満ちていて、なかなか魅力的だ。

[クーラーバッグ]
 現在のようにソフトタイプのカメラバッグがまだ普及していない頃、隠れた人気を呼んでいたカメラバッグがあった。コダックのクーラーバッグがそれ。おそらく、もともとは販促品として作られたものだろうが、量販店などで千〜二千円程度で売られていたように思う。クーラーバッグというものも珍しかったような時代なので、これをカメラバッグ代わりに使うのがカッコいいような感覚もあった。軽くて、あんがい丈夫、そして何よりも安かったので、お世話になった人も多いのではないだろうか。
 写真のものは、フィルムをデザインした横長タイプだが、出回ったはじめの頃に売られていたのは、縦長のタイプだった。六切の印画紙がちょうど入るサイズだったので、カメラバッグとして、印画紙ケースとして、時にはドリンクを冷やすクーラーバッグとして重宝した記憶がある。

[ソフトタイプバッグ]
 カメラバッグの需要が高まったのは、カメラ・フィルム・レンズが手頃な価格に感じられるようになってからであろう。しかし撮影に持ち歩くのに、写真屋さんが使っているような本格的なトランク式のカメラバッグは、大げさに感じるだけでなく、重くて実用的ではない。そんななか、海外製のソフトタイプのカメラ専用バッグの登場は画期的だった。
 私自身、当時自分としてはけっこう思いきって、テンバのP-211の初期モデルを二万円程度で買った覚えがある。買うときは高く感じたが、カメラ・レンズ・フィルムの収まりのよさと、すぐれた防水性が気に入って、何年も使っていた。あまりに毎日のように持ち歩いていたので、着たきりのジーパンのバッグと接触する部分が、擦れて白くなってきてしまったほど。バッグの方はまったく摩耗していなかったので、その丈夫さにも驚いたものだ(現在のソフトタイプのバッグは、素材の編み方が工夫されているので、こうしたことは起こりにくい)。

[ハードタイプバッグ]
 ソフトタイプのカメラ専用バッグが、ストリート系のカメラマンの定番ならば、スタジオ系のカメラマンの定番は、ハードタイプのカメラバッグだろう。ハードタイプのなかでも、アタッシュケースタイプは、男心をくすぐるものがある。007をはじめ、デキる男はアタッシュケースの留め金をカチカチッと開き、どんな仕事でも難なく片付けるものと相場は決まっている。
 そうしたイメージの象徴となっているアタッシュケースタイプといえば、ゼロ・ハリバートンだろう。バブル華やかなりし頃は、ハッセルブラッドが何台も入っていそうなゼロ・ハリバートンと、ジッツォの三脚をアシスタントに持たせているカメラマンを、じっさいよく見かけたものだ。
 ハードタイプのバッグは、堅牢でカメラをしっかりと守ってくれるのはいいが、公共交通機関で持ち運ぶときには、人に当たらないようにけっこう気を使う。そのせいか最近では、電車などでアクセサリーっぽくゼロ・ハリバートンを持ち歩く人が少なくなったようだ。逆にいうと、ほんとうに必要としているならば、今こそアタッシュケースタイプを使うのがカッコいいのかもしれない。

[バッグがいらないカメラ]
 なぜカメラに専用のバッグが必要なのか? カメラが精密機械で、デリケートだからだろう。だったら、もしヘビーデューティなカメラがあれば、バッグはいらないはず。
 売り場では目立たないが、そうしたカメラもじつはあるのだ。フィルム、デジタルともにラインナップしているコニカミノルタの現場監督シリーズ、富士フィルムのワークレコード(フィルム)・BIG JOB(デジタル)といった、工事現場用カメラがそれ。また、残念ながら生産終了になってしまったが、時計でおなじみのG-SHOCK系のデザインの、カシオG.BROSシリーズ(デジタル)などもある。
 こうしたカメラは、海や雨などのシチュエーションでもガンガン使えるし、子供が使っても安心というメリットもある。ヘビーデューティなカメラは、バッグを忘れさせてくれる楽しいカメラでもあるのだ。

[デジタル時代のカメラバッグ]
 デジタル時代になって、撮影のための機材も変化し、カメラバッグに求められるものも変わりつつある。
 機材をデジタル化した場合、フィルムのスペースは不要になる。その反面、泊まりの撮影旅行などでは、充電器やストレージが必須だろうし、できればノートパソコンを持ち運び、CDやDVDにバックアップをとるところまで済ませたいところだろう。そう考えると、デジタル時代になって、持ち運ぶべき機材がまた増えてきているのかもしれない。十九世紀のような装備の重さになることはないだろうが、撮影から処理までの装備を持ち運ぶという意味では、皮肉にも馬車時代に逆戻りしたような感もある。
 撮影機材が変化してくると、必ずそれに合わせたバッグも登場してくる。銀塩とデジタルが共存している現在は、種類もじつに豊富。私たちは今、もっともカメラバッグ選びの楽しい時代にいるのかもしれない。