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[穴語:バックアップ & ブレ・ボケ/日本カメラ2005年6月号:214]


[ブレ・ボケ]

 十九世紀や二十世紀初頭の風景写真などのオリジナル・プリントを見たことがある人なら、古い写真の像が意外にシャープなことに驚いたことがあるのではないだろうか。じつは、ブレやボケという問題は、カメラが進化するにしたがって逆説的に増えてきた問題でもあるのだ。カメラが小型軽量化するにつれて、手持ち撮影が普通になり、フィルムがロールになって平面性が低下しているにもかかわらず、ネガも小さくなるから引伸しの倍率も高くなってくる。それに比べれば、三脚を使用してじっくりと撮影され、ガラス乾板で密着焼の昔の写真がシャープなのはあたりまえのことなのである。
 こうした背景もあり、現代人の目は、ブレたりボケたりした写真に慣れてしまっているので、小さなブレやボケには気づかないことも多い。とはいえ私たちは、ブレやボケがまったくといっていいほどない写真を、じつは身近に経験している。コピー機やスキャナによる像がそれだ。専用にチューニングされたそうした機械を、普通のカメラと比較するのは適切ではないが、ひとつの理想の目安にはなるだろう。
 ブレやボケも表現の味といえなくもないが、ブレボケ派を一生続けるのでないのなら、やはりシャープな写真を目指したいもの。幸い現代のカメラには、オートフォーカスや手ブレ補正などの優れた機能もある。そうした機能を上手に活かしつつ、シャッターが切れる瞬間を意識して丁寧に撮影するだけでも、かなり結果は違ってくるはずだ。
 

[バックアップ]

 バックアップを必ずしておこう、と私自身よく書いてはいるものの、正直に言うとそんなにマメにきちんとやっているわけではない。パソコンと同じ容量の外付ハードディスクに週一回、まるごとバックアップしている程度である。これなら、ハードディスクやパソコンが壊れたときにも復旧が楽だし、この頻度で助からなかったデータはあきらめることにしている。
 どうしてこういうずぼらな方法に行き着いたのかというと、バックアップするのに疲れてしまったから。デジタルデータの大きなメリットとしてよく言われるのが、永久保存できるということだが、あまり言われないのが、永久保存するためには、永遠にコピーし続けなければならないということ。しかも、保存すべきデータは、増えることはあっても減ることはない。慎重を期して何重にもバックアップをとっていると、保存すべきデータは加速度的に増えていく。バックアップにあまりに多くの労力と時間を費やして、写真を撮るのがめんどうになってしまったりしたら、本末転倒だろう。どこかで割り切って、長続きする方法を見つけることが肝心。
 ところで、バックアップとは要するにコピーを保存しておくこと。簡単にコピーして共有できるというデジタルデータの性質は、著作権の観点からはあまり評判がよくないが、自分が撮った写真ならこの性質を活かしてみるのはどうだろう。この一枚という写真は、データごと親しい人に渡しておくのだ。歴史的な美術品が残っているのも、誰かが今日まで大切にしてきたからこそ。アナログだろうが、デジタルだろうが、誰かが愛着を持って大切に保存していることこそが、最高のバックアップであることは、昔も今も変わりはない。