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[穴語:長押し & 仕様/日本カメラ2005年4月号:214]


[長押し]

 「もう一時間位押しているんですが、"長押し"っていうのはいつまで押していればいいんでしょう?」。実話なのか作り話なのかわからないが、こんな電話がサポートセンターにかかってくるという笑い話があるくらい、電子化された機器の操作はなじみにくい。
 考えてみると現代の生活は、押してばかりだ。昔は押すといえばシャッターの専売特許だったが、今はカメラだけでなく、リモコン、券売機、ATM、携帯電話、コンピュータ…、四六時中ボタンやキーを押している。それぞれの機器で、微妙に押し方が異なり、ちょっと間違えると、望んでいない動作をしたり、はじめからやり直せと怒られたりする。シャッターが切れてしまうのではないかと、ビクビクしながら半押しをし、5つのキーを同時に押せとコンピュータに無理難題をいわれて、キーボードと格闘する。そんな日々が現代だ。
 しかし、いくらボヤいても仕方がない。何も押さずに一日を終えることがほとんど不可能な生活をしている以上、慣れてしまった方が得策だ。まずは、操作するという意識を捨て、気楽に付き合ってみること。半押しを失敗したからといって、逆上がりができなくて校庭に取り残された小学生のようにしょげかえる必要はないのだ。
 では、慣れるにはどうすればいいのか。複雑なボタン操作になじむのにはゲーム機で遊ぶのが一番、キーボードやマウスになじむのには下心を持ってチャットするのが一番、と言われている。ただし、どちらもハマりすぎると、本末転倒になるだけでなく、別の問題を起こしかねないのでご用心を。

[仕様]

 仕様には、オモテの意味とウラの意味がある。カタログなどに華々しく、「こんなに素晴らしいことができますよ」と書いてあるのが前者。どう考えてもおかしい現象をメーカーに問い合わせて、「それは異常ではなく、そういうものです」と冷たくあしらわれて愕然とするのが後者。
 仕様だからしょうがないか…、などとダジャレを言って納得できるはずもないので、何かを購入する前には、カタログに書いてあることだけでなく、じっさいに自分が使う場合を想定して、カタログに書いてない部分もしっかりチェックしたいもの。疑問点をリストアップして、店頭などで実機をチェックするのが一番だが、それができない場合には、インターネットの掲示板などでユーザーの生の声を聞くのも参考になる。
 ところで製品には、手にしっくりくるとか、使っていて気持ちがいいといった、言葉ではあらわせない部分もある。こればかりは自分で長く使ってみないとわからないが、最も大切なところだろう。仕様の良し悪しなど気にならなくなる愛機に出会えるのが、一番幸せなのかもしれない。