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[デジタル写真超整理法PART1/日本カメラ2004年11月号:182-185]


リード

 あれもできる!これもできる!を宣伝文句に、デジカメやパソコンはつねに高性能・高機能を競っている。ところがじっさいに手に入れて見て驚くのが、覚えなければいけないことの多さではないだろうか。そう、自分でできるということは、別の言い方をすれば、自分でやらなければならないということなのである。
 宣伝文句だけを読んでいると、デジカメやパソコンは何でもできる魔法の機械のようだ。しかし、だからといって、機能を全部使わなければならないわけではない。ここではまず、デジタル機器になじみのない人が、できるだけ楽をしてパソコンでデジタル画像を整理するスタートラインに立つ方法を考えてみた。機械まかせにできることは機械にまかせて、他人まかせにできるサービスがあるならそれを活用すれば、デジタルの敷居は案外低くできるのである。

パソコンは必需品

 デジタル画像を整理するのに必要なものは何か。当たり前だが、まずはパソコンである。最近はパソコンなしでもプリントできるプリンタなどもあるが、パソコンを使わずにデジタル画像を管理するのは現実的ではない。
 最初のパソコンを買うときは、ローエンドモデルやエントリーモデルと呼ばれる安いもので充分だと思う。なぜならパソコンは半年から一年も経てば、より高性能で価格も安い新しいモデルが出てくるからだ。だったら例えば30万円の予算があるなら、はじめから30万円を投資するより、10万円のものを買ってパソコンに慣れてから、一年後に自分が必要な性能のものを20万円出して買った方がいい。
 安いもので充分だとはいえ、古いパソコンはやめた方がいい。最新のパソコンには標準装備のポート(*)がついてなかったり、付属のソフトも古かったり、何かと手間がかかる中古パソコンは、初心者向けではないのだ。古くても、せいぜい新製品の一つ前のモデルくらいまでにしておこう。
 画像をいじることを前提として考えるならば、もしオプションでハードディスク(HDD)の容量を選べるならば、できるだけ大きな容量のものを選んでおきたい。画像は捨てない限り、増えることはあっても減ることはないからだ。そして、メモリ(*)もコストパフォーマンス(*)のいい512MB(*)位を増設しておこう。販売価格を下げるために、はじめから入っているメモリは最低限動作する程度のものであることが多く、快適に使うには増設が必要だ。

パソコンを買ったら

 子供はゲーム機でも携帯電話でもパソコンでも、あっという間に操作を覚えてしまう。理屈を抜きにして、とにかく使ってみるからだ。大人でも、使って使って使い倒すことが、実はパソコンに慣れる早道。せっかく買ったのだから、習うより慣れろで、失敗を恐れずにどんどん使おう。ある程度慣れたら早い時期に、バックアップをとってシステムを再インストール(*)をして復旧する練習をしてみてもいい。システムを元に戻す方法を覚えておけば、トラブルもそんなに恐くなくなる。
 パソコンを手に入れたら、すぐやっておきたいのがインターネットへの接続。現代のデジタル機器は、アップデータ(*)のダウンロード(*)や、メーカーサイトや掲示板(BBS)(*)などでの情報収集、ネットショッピング、オンラインアルバムの利用など、インターネット環境が大前提になっている。自分の住む地域に対応しているなかで、リーズナブルなブロードバンド常時接続環境を選ぼう。

周辺機器やソフトは一つずつ

 パソコンを買ったら、さっそくデジカメやスキャナ、プリンタなども手に入れたくなるもの。しかし、周辺機器を一気に接続して、付属や別売のソフトを一気にインストールするのはトラブルのもと。周辺機器やソフトは一つずつ接続、インストールして、しばらく使ってみて問題がないようだったら次に進もう。一気に環境を変えると、トラブルが起きたとき何が原因かわからなくなるが、一つずつ前に進めば、もとの環境に戻すのも容易だ。
 周辺機器もパソコン同様、日進月歩。待てば待つほど安価で性能がよくなるのだから、すぐ使うのでなければ、慌てて買う必要はない。日常的に使うのでなければ、プリンタがなくてもオンラインのプリントサービスなどを利用してもいい。スキャナやデジカメがなくても、DPE屋さんのCD-R書込サービスを使って、銀塩で撮った写真をデジタル化することもできる。ネガフィルムなら一本500円程度と価格も手ごろなので、こういうところからデジタル画像の整理をはじめてみるのも、ひとつの方法だろう。

デジカメは使いやすいものを

 各メーカーがこぞって新製品を投入し、百花繚乱の感があるデジカメ。数多くのデジカメのなかからどれを買うか、パソコンよりも迷うところかもしれない。もし、デジカメに触れるのがはじめてならば、お薦めしたいのは日常的に気軽に持ち歩けるコンパクト機。銀塩のカメラの高級機は時間が経っても価値が変わらないことが多いが、デジタルの世界ではカメラも容赦なく新製品が出て、あっという間に価値が半減していく。ろくに使いこなしてないうちに、大枚をはたいて買ったデジカメの性能が古びてくるのはショックだろう。手頃な値段のデジカメならこういうショックも少ないし、コンパクト機ならあとあと使い道もある。
 それぞれのデジカメのいいところはカタログなどでもわかるが、じっさいの使い勝手はやはり触ってみないとわかりにくい。同じような見た目でも、デジカメの場合は操作性が全く違うことがあるのだ。また、カタログでは同じにみえる機能でも、"やってできないことはない"のと、"簡単にできる"のでは、大きな差がある。使うたびに説明書を見ないとわからないような機能があっても、使わなくなる可能性が大だ。このあたりの違いを見分けるためにも、店頭などでいろいろなデジカメを触ってみて、自分にとって直感的に操作できるものを選ぶのがいいだろう。

パソコンへのデータ転送

 デジカメで写真を撮ったら、まずやることはパソコンへのデータ転送。初心者にありがちなのが、メモリカードをマウント(*)したままにしておいて、パソコンに転送した画像をいじっているつもりが、いつの間にかデジカメのメモリカードの画像をいじっているという失敗。デジカメのメモリカードをパソコンでいじるのは何かとトラブルの元になるので、転送したらメモリカードはすぐにアンマウント(*)する。そして、パソコン転送したデータのバックアップもしておく。その後に、次の撮影のためにデジカメを使ってメモリカードの画像を消去する。この一連の流れをパターン化して習慣にしておくことで、操作ミスや事故によるデータの消失の危険を最小限に防ぐことができる。

デジタル画像の整理と加工

 パソコンはどんどんフォルダを作れるし、ファイル名も簡単に変えられる。だから、「花」「家族」「旅行」「お正月」「スナップ」など、いろいろな名前でフォルダやファイルを作ってしまい、どこに何があるのか、どこに整理すべきか逆にわからなくなってしまいがちだ。とりあえず、フォルダは年月日などの法則性をもった簡単なものにしておこう。ファイル名もデジカメが自動的につけている連番を大きく崩さない方がいいだろう。自分の必要な整理項目がしっかりと定まってからでも整理はできるが、滅茶苦茶に分類してしまったファイルを元に戻すのは至難の業。整理しすぎない程度の柔軟な整理システムにしておくことが長続きするコツだ。
 ほとんどのデジカメが採用しているJPEG(*)という方式は、不可逆圧縮。加工して保存を繰り返すたびに、少しずつ画質が劣化していってしまう。加工をするときは、「別名で保存」を選ぶか、コピーしたファイルを使うかにして、オリジナルに手を加えないようにする。じっさいにパソコンであれこれ画像をいじっていると気づくが、撮影のときにサイズや画質を高く設定した画像は、重くて(*)何かと扱いにくい。なるべく高画質を選んで撮影した方がいいと言われることが多いし、確かにその通りなのだが、高画質のデータはサイズも大きく、パソコンのハードディスクも容赦なく埋めつくしていく。作品作りは別として、日常のスナップやメモ代わりの画像などは、それなりの画質でも充分だろう。

バックアップ

 バックアップのためのメディアはいろいろあるが、必ずひとつは持っておきたいのが外付けハードディスク。今なら、値頃感のある120GBか160GBくらいの、USB2.0(*)やIEEE1394(*)などの高速転送に対応したものがいいだろう。外付けハードディスクをまずお薦めするのは、大容量のデータを転送してコピーするにも復元するにも使い勝手がいいから。パソコンのシステムを再インストールするときの一時的なデータの待避用としても使えるし、パソコンを買い換えたときのデータの移行用としても使える。
 ハードディスクにバックアップすることのデメリットとして、消耗品と言われるハードディスクはいつかは壊れるということがある。だが、内蔵と外付けが同時に壊れることは滅多にないだろう。壊れたら、あきらめて新しいものを買えばよい。
 慎重を期すならさらに、CDやDVD、MOなどにバックアップをとっておく。ただし、そうしたメディアにバックアップをするときは、内容をきちんと書き込んで整理すること。バックアップが何が入っているかわからないディスクの山になっていては、いざというときの役に立たない。
 ところで、コピーを繰り返しても劣化しないデジタルデータは、永久に保存できると言われている。そう言われると、永久に保存しなければいけないような気になってくるが、果たして永久に保存しなければいけないデータがどれほどあるだろうか。万が一に備えて慎重に慎重を期して、何重にもバックアップをとっておくのはもちろんいいことだが、永久保存が目的になって、デジタル画像を整理するのが苦痛になっては本末転倒だ。どこかで割り切ることも考えておいた方がいい。

用語

*ポート…パソコンと周辺機器をケーブルで接続するための端子(穴)のこと。種類は違うのに似ている穴や、上下がわかりにくい穴もあるので、合いそうな穴に適当に無理に刺しこんで壊さないこと。

*メモリ…パソコン本体用のメモリは種類も多く、間違った種類を買ってしまうと増設できなかったり、増設できても動作しなかったりする。パソコンのパーツのなかでも相場の変動が激しく店によっても値段が違うので、ついつい節約したくなるのだが、自信がなかったら多少割高でも本体と同時に買って増設してもらうのがいいだろう。

*コストパフォーマンス…価格性能比。例えば、512MBのメモリが1万円程度でも、倍の1GBのメモリは2万5千円程度で、コストパフォーマンスが悪く割高。

*MB…メガバイト。K(キロ)は10の3乗、M(メガ)は10の6乗、G(ギガ)は10の9乗を表す単位。2進数が基本のコンピュータの世界では、2の10乗が10の3乗の代わりに使われるので、128や256や512といった半端な数になるのだが、とりあえずはK→M→Gの順にほぼ1000倍ずつ単位が大きくなると覚えておこう。

*システムの再インストール…Windows XPやMac OSなどの基本ソフトを入れ直すこと。サポートセンターに電話して、原因がよくわからなかったりすると、あっさり"システムを再インストールしてみてください"と言われたりする。買ったときの状態に戻すのだから不具合が解消するのは当たり前なのだが、言うのは簡単、やるのは面倒くさい。でも、パソコンを使う以上、いつまでも避けては通れないことでもある。

*掲示板(BBS)…掲示板やサポートセンターに質問するときには、自分のパソコンの環境や状態を正確に伝えることを心がけよう。"何もしていないのに突然パソコンが動かなくなりました!"では、相手もアドバイスしようがない。掲示板の場合は誰もアドバイスする義務がないのだから、謙虚さを忘れずに。いろいろな掲示板に同じ質問をするのは「マルチポスト」と言って嫌われるので注意しよう。

*アップデータ…家電製品と違って、パソコンのソフトは小さな不具合を含んでいることが多い。その不具合を修正するためや、若干の機能向上のために提供される、ソフト書き換え用のソフトをアップデータと言う。使っていて"おかしいな"と思っていた現象は、アップデータによって解消されることも多いが、アップデータがまた別の不具合を含んでいることもあるので、愛用しているソフトの更新情報はよくチェックしておいた方がいい。

*ダウンロード…インターネットを通じてデータを自分のパソコンに転送すること。「落とす」とも言う。逆に、インターネットを通じて自分のパソコンのデータを転送するのは、アップロード。

*マウント/アンマウント…周辺機器をパソコンに接続して認識させることを、マウントすると言う。接続を解除するのは、アンマウント。接続した機器を操作中にアンマウントすると、トラブルが発生する可能性が高い。面倒でもマウント/アンマウントに関する約束事は、しっかりとマニュアルを読んで覚えておこう。

*JPEG…写真ではもっとも一般的な画像データの圧縮保存形式。JPEGはデータを圧縮したら元に戻せないので、保存=不可逆圧縮を繰り返すのは好ましくない。要するに、カメラが撮影時に保存した一回目の圧縮データが一番画質がいいので、これは手を加えずにそのままとっておきたいのである。他にデジカメに採用されている方式としてはRAW、TIFFなどがある。RAWは撮像素子からの信号をそのまま保存する方式なのでデータも大きく、撮影後パソコンのソフトで「現像」しなければならない。TIFFは画像データの保存形式なので「現像」の必要はないが、非圧縮方式なのでやはりデータは大きめ。

*重い…パソコンの動作速度を、体感的に重い・軽いと表現することがある。パソコンの動作速度はCPUの処理性能で比較されることが多いが、じっさいの速度は、さまざまな要素が絡み合うので必ずしもCPUの数値には一致しない。それだけでなく、人間が感じる速度はまた違うので、体感速度もとても重要だ。

*USB2.0/IEEE1394…周辺機器をパソコンに接続するときの形式。IEEE1394は、Apple(Mac)がFireWire、ソニーがi.Linkと呼んでいるが同じもの。macはIEEE1394を標準搭載してきたが、最近の機種ではUSB2.0も搭載している。windowsはUSB2.0を標準搭載してきたが、IEEE1394も搭載している場合もある。こうした事情はともあれ、重要なのは自分のパソコンがどの形式用のポートをいくつ搭載しているのか把握しておくこと。USB2.0はUSB1.1との上位互換性があるが、USB1.1は転送速度が遅いので、USB1.1の外付けハードディスクが安売りされたりしていても買わない方がいい。