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[書評:人間とは全く違った視点から捉えられた虫たちの姿・栗林慧『発見』『変身』『瞬間』『色彩』(栗林さんの虫めがね全4巻)/日本カメラ2004年8月号:97]


 自作の特製カメラや撮影システムで独自の昆虫写真を切り開いてきた栗林慧が、子供向け写真絵本シリーズ『栗林さんの虫めがね』全四巻を出版した。
 『発見』はCCDビデオカメラ用のレンズを使った虫のクローズアップから遠景までピントが合う「虫の目カメラ」による写真、『変身』はストロボを改造して昆虫をはっきりと捉えることに成功した「昆虫スナップカメラ」による写真、『瞬間』は自動撮影を可能にする「光センサー撮影システム」などによる写真、『色形』は虫たちの色や形に着目した写真によって編まれている。いずれの巻に収められている写真も、栗林が撮影しなければ見ることができなかったであろう、人間とは全く違った視点から捉えられたユニークな虫たちの姿であり、子供はもちろん、大人が見ても思わず引きつけられてしまうことうけあいだ。
 それぞれの巻末では、どのような発想でカメラを工夫して作ってきたのかが、わかりやすく解説されている。かつてカメラは、見えなかったものを見えるようにし、未知の世界へと誘ってくれる夢の機械だった。「ぼくが考えた写真をとることのできるカメラは、どこにもなかった。なければ自分で作ればいい。そう思って、世界にひとつしかないカメラや撮影装置を、いくつも作ったんだ」。こう語る栗林の発想と写真には、そうした夢の機械としてのカメラがまだまだ生きている。そしてその夢は、新たに地面から数ミリの高さの撮影が可能な「アリの目カメラ」を作り上げるなど、さらに拡がりつづけている現在進行形のものでもある
 虫たちへの好奇心を、そのような夢とともに届けてくれるこのシリーズは、昆虫と接する機会が少なくなった現代の子供たちへの素敵なプレゼントになるに違いない。