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[広河隆一編集の「世界の戦場から」シリーズ刊行:広河隆一『反テロ戦争の犠牲者たち』、小林正典『国境を越える難民』/日本カメラ2003年9月号:92]


 岩波書店から、「岩波フォト・ドキュメンタリー/世界の戦場から」というシリーズの刊行がはじまった。全11冊・別冊1の予定で、第一回は広河隆一の『反テロ戦争の犠牲者たち』と、小林正典『国境を越える難民』が刊行されている。
 このシリーズの最も注目すべきところは、9.11後にフォト・ジャーナリストたちが結集し設立された「JVJA(日本ビジュアル・ジャーナリスト協会)」のメンバーによって作られていることだろう。ジャーナリズムが人間の生命と尊厳とその環境を守ることに深いつながりをもつという認識を共有し、取材と報道の権利を守り、自らのジャーナリストとしての姿勢をただすという目的で設立された同協会は、映像を用いるジャーナリスト自身がそうした志を共にしていることを明確に表明している点において、画期的なものである。このシリーズの刊行は、フォト・ドキュメンタリーの写真集として貴重なものであるだけでなく、同協会のメンバーの活動をまとまった形で世に問うものにもなるだろう。総編集の広河は、その意気込みを次のように述べている。
 「現在私たちの時代が直面する状況を、危機感を持って報道し、同時に第一線のフォト・ジャーナリストの作品集としてのクオリティーがあること。その地域のそのテーマの写真集として最高レベルのものであること。人権や生命が脅かされている現代に、警鐘を鳴らす作品になっていること。問題の背景と現場への自分の取材態度、この時代になぜそのテーマを追うのか、人々とのふれあい、などの視点に立った文章であること。――このようなドキュメンタリーを目指したい。」
 サイズや価格を手頃に抑えつつも、内容には妥協していないこのシリーズは、フォト・ドキュメンタリーが今日まだまだ果たすべき役割があることを知らせてくれるものになるに違いない。