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[徹底した無名性の美とデカい・重い・エロい写真集ふたつの究極本:『BELLEVUE』・ヘルムート・ニュートン『SUMO BOOK』紹介/アサヒカメラ2000年4月号:189]


 『BELLEVUE』は、パリのパープル・ブックスと、東京のフィクション・インクが共同で企画した、郊外のランドスケープ写真を編んだ写真集だが、いわゆるアンソロジーものとは、趣向が異なっている。日本からは、ホンマタカシ、佐内正史、そして、リチャード・プリンス、ダグ・エイケンら、世界15人の作家による写真を編んだ本書は、「ランドスケープ/エスケープ」という抽象的なテキスト以外は、いっさい分類や解説もなく、作者名もほとんど目立たない形でデザインされ、世界の郊外のランドスケープが、連続的に展開されている。その結果、写真集そのものがランドスケープをめぐるヴィジョンとして浮かび上がっており、きわめて刺激的だ。

Helmut Newton's Sumo  ところで、そうした編集の妙とは違った形で、刺激的な写真集の出版をしているのが、ヘルムート・ニュートン。新刊の『SUMO BOOK』は、50x70センチ、重さ30キロ、全480ページ、フィリップ・スタルクデザインの専用スタンド付という、出版物の歴史を塗り替えるような、驚くべき仕様になっている。ヴァイオレンスとエレガンスを融合させたイメージで人気のニュートンだが、本書はそのヴェイオレンスとエレガンスを、写真集の存在感そのものにまで昇華させたかのような一冊だ。

 匿名性のなかにランドスケープのイメージが溶けていくような『BELLEVUE』と、ヘヴィー級のオブジェとも言えるような『SUMO BOOK』。形はまるで違うが、どちらも世紀末らしいセンスに満ちた試みが感じられるところが嬉しい。